| 前作リリース直後に脱退したクリストファーも復帰。
プロデューサーはフレドリック・ノルドストロームを起用して製作された通算7作目のフルレンス。
皮肉でもなんでもなく皆大好きARCH ENEMYの最新作がついにドロップ。なんとマイケルの弟、クリストファーが電撃復帰。しかも、プロデューサーはかのフレドリック・ノルドストロームということで期待しないファンはいないという前評判の中ついにおでましだ。
正直クリストファーの復帰劇は茶番にしか見えないが、ファンにとっては素直に喜ぶべきことだ。そして、テーマは「原点回帰」。最近の作品は少しマンネリ気味な感はあったし、初期のファンを取り戻したいという気持ちもあったのだろう。
これは相当な期待が持てるぞってことで早速再生。さぞかし必殺の泣きメロをこれでもかとフィーチュアしてるんだろう。しかし、アルバムを聴き終えてそれほどマイ・ハートにビリビリと来るものが無かったのはどうしてだろう。
原因を一つずつ述べたいと思うが、まず一聴して「デスメタルらしさ」が無くなってしまったという事が残念。誤解を恐れずに言うならポップ・ミュージック化したといっても良い。それはフレドリック・ノルドストロームの仕事によりやたら音質が良いというのもある。こんなクリアな音象のアルバム中々ないよ。
もちろん、J-POPしか聴かない人が聴けばさぞかしエクストリームな音楽に聴こえるだろうが、私のような病人にはどうだろうか。さらに最近のチルボドに見られるような正統派HEAVY
METALへのアプローチが非常に強いのが印象的である。
正統派HEAVY METALアプローチが強いギタリスト、それはクリストファー。
彼はOZZY OSBOURNE
時代のジェイク・E・リー やIRON
MAIDENからの影響もあるという生粋の正統派である。
対してマイケルといえば有名なムスティン派であるが、本作のメロはクサクサの北欧的というよりはマーティ・フリードマン
加入以降 MEGADETH の緊迫感に満ちたメロが、クリストファーが自己主張することによって研磨されたというイメージが湧いてくる。
メロデスというよりは、デスボイス+欧州メロディックパワーメタルといった方がしっくりくるようなお行儀の良いサウンドはブルータルさを求めるファンには受け入れられないかもしれない。
もちろん、一概にMEGADETH 化したという訳でもなく、きめ細やかでいて流れるようなメロディのタッチといい、ぴりっと効いたダークでゴシカルなスパイスは間違いなく北欧者の仕事だ。
そして、完全にバンド・カラーとなったアンジェラのヴォーカルは相変わらず。はっきりいってバックの演奏陣はデスメタル離れを起こしているが、女性とは思えないビーストデスボイスは健在。
彼女は女性らしさを消すことで有名だが、どこか後を引く高音はやはり女性的。官能的でヒステリックな感情表現は一流のデス・シンガーであるということは誰もが認めるところだろう。彼女のお陰でデスボイスというのはすごく丁寧な歌唱法ということが良くわかる。
まあなんだかんだ言ってやはり個々の楽曲のクオリティはすげえ!の一言。ハードコアタッチで突っ走るキャッチーなリーダートラックはクールだし、そうそうこれを待ってたのよっていう必殺泣きメロを搭載した#7もグッド。北欧GARY
MOORE#8のようなインストもファンを大いに喜ばせることだろう。さらにはラストトラックのツインギターバトルによるメランコリック・ドラマは凄まじい。
というわけで確かにハイクオリティな作品なのは間違いないが、どうにも強烈なインパクトに欠けるというか。心の名曲にしたいほどのキラーチューンがないんだよね。それと捨て曲は無いが、曲ムラがあるのが結構痛い。
そして、この手のバンドにしてはコンパクトな楽曲はパンクスな私にとっては大歓迎なのだが、どうも楽曲の見せ場もコンパクトにしてしまっているような小粒さが若干気になる。個人的にはアルバムの楽曲を8曲位に絞って、これでもかと泣きメロを撒き散らすような作品の方がより破壊力が出たと思うのだが。
それとCult House
Remainsのループ・ゾンビさんの「ほら、こういうのがいいんだろ!?」という製作者側の意図が露骨に伝わってくるというコメントにも大いに頷ける。確信犯的な狙いっぷりが確かに鼻につくのだ。良くも悪くも素直で堅実過ぎる為、これは飽きやすそう。
もちろん、それが悪いとは私は思わない。要するに曲さえ良ければなんでもありなのだ。しかし、一番評判が良かった頃の楽曲をここで焼き直ししても、過去の名曲を越えているとはどうしても思えない。
それでも、昔からのファン(昔のファンではないというところがポイント)や新規ファンを虜にする魅力は十分にある作品だし、やはり買って損はしないというアルバムを作れるのは天才の仕事なんだよなあ。
2007.9.30 |